2013年9月28日土曜日

地下画廊






























上海から西へ、陜西省の西安をへて5時間ほどで、ゴビ(土漠)にある甘粛省の嘉峪関の空港につく。小雨模様のすっきりしない空にちょっとがっかりしたけれど、降水量の極端に少ないこの地では、雨はたいへん貴重で稀です、と言われ、それではきっとラッキーな日なのね−と思う。ドライバーとガイドに出迎えてもらう。二人とも敦煌で生まれ育った方々で、ガイドさんはきちんとした日本語を話す可愛らしい人。ドライバーも穏やかな方で、とても心強いと思った。

空港から15分ほど走れば、1600年程前の古墳群。魏晋時代のもので、100㎢のゴビに3000基以上があったという。どうにも想像しきれない広がり。1970年代の発見が最初で、今日内部を閲覧できるのは6号墓のみ。 北向きの階段を20数段ほどおりた地下には3室あり、建造はすべて日干しレンガで組まれている。特に天井に目をやれば、幾何学や力学を利用して絶妙に組まれた感じがよくわかる。壁には地下画廊と称される壁画の数々。レンガ一枚一枚に描かれた絵は、生き生きとして生活絵巻のよう。とっても印象深いものだった。地下内部の撮影は許可されないので、敦煌博物館にての展示を記録。

2013年9月24日火曜日

中秋の頃





















































































甘粛省で迎えた今年の中秋。敦煌の街はコンパクトで、上海に比べとてもさっぱりとしたきれいさ。少し高い建物にいれば、五色の砂粒の鳴沙山がどこからでも望める砂丘の街。名前とイメージに憧れた街にこうしていることが、なんだかとても不思議。ラクダに乗って砂丘を歩く。ラクダは思っていたほど高くはなくて、象や馬の背にいるよりずっと安堵感。それぞれの飼い主がコントロールしてラクダ達をひいていく。 砂嵐に対応できるその睫毛は異常に長くて、鼻先長い顔をより可愛らしい感じにしているけれど、その背にまたがれば、灼熱の下を行く彼らの身体のすごさが伝わってくる。岩のように頑健で忍耐強そう、皮膚や毛は砂漠の砂に同化しているようなごわごわした感触。

今ごろの日没は8時くらい。この日は玉門関や陽関などから始まり、お昼からはゴビの土漠を東へひたすら走ること約4時間。 120km/hほどでノンストップ、土漠と空を地平線がくぎる。鳴沙山についたのは夕方で、太陽は傾きつつもまだ上の方にあり陽射しの強さ感じる。丘の陰にはいればちょうど心地よい具合の温度で、空となめらかな砂丘が広がる風景はのびのびとして爽やか。ハングライダー達は砂丘の上に月を横切る鳥のよう。
これが日中であれば、砂の中で一瞬のうちに卵がゆでられてしまうほどという。日暮れのころの優雅な砂丘と、日中、熱く乾いて永遠のような過酷を感じさせる砂丘。そのコントラストを想像したら、ラクダの背でちょっとクラリ…息をのむ。 

街に戻り、歌劇場で観た舞台は、鹿が主役で仏教に所以のストーリー。バレエやダンス、新体操に軽業などなどパフォーマンス満載だった。 街の中心はサークル道路になっていて、その中央には中秋の月に琵琶を奏でる天女像。背中で琵琶を担ぐようにして奏でるのは、莫高窟の壁画に描かれた天女達のスタイルで、敦煌の街のシンボル。悠久の時を経て今も街と人々へ幸福の琵琶を奏でるよう。風雅な中秋の夜。



2013年8月28日水曜日

ハミウリのころ





























永遠に続くような気がした暑さも、高熱が下がるようにだいぶ落ちついた感じ。初めて聴いたときには工事の音?と思うほどに空気を割っていた蝉の声が、いつしかアブラゼミの種類の鳴き声にとって変わり、じき秋の虫の音になっていた。夏の終わりの寂しさをちょっと感じたのは日本と同じ。スイカ、終わってしまうのかしら…と思ったら一層なごり惜しい。

トロピカルフルーツやスイカを、たくさん食べた夏。こんなにたくさん食べたのは、生まれて初めて。スイカは丸ごと買ってスイカジュースにしてみたりも。このところ出て来たのはハミウリで、新疆が産地だそう。とっても大きくて、オレンジ色のマスクメロンのような味わい。夏の終わり頃からが旬で出回る。店には中秋の文字が目立つようになり、月餅もあちこちにいっぱい。秋の気配が少しづつ色こくなる。

まだ一月ほどなのに、もう数ヶ月が過ぎたような感じ。すべてのことに試行錯誤で、食もしかり。先日は、ハムを作る手順を作文してお店の人に尋ねたら、よっしゃーとばかりに、奥から脚の部分を一本出してきた。ちょっとびっくり…これってボンレスハムにするときの腿?かも…ロースの部位とともに、ともかくトライ。いつもどうりに出来上がりほっ…と。 他の素材もさまざまで、小豆なども豊富で手軽。思うよりもずっとよく炊けて、餡がおいしい。

ハムは薫製の前にボイル67度キープ…これはたぶん世界共通。そして、この夏は、サンルームにほっておくだけでヨーグルトが簡単にできたり、パンの発酵もそこに少し放置すればお手軽…暑さも意外なところで活用できた。

食のことでは実際、都市伝説まがいの話や問題もあり、たぶんなによりも習慣の違いによるところが、すべての違いにも関わっていることに気がつく。民族の個性や調理方法などなど。 さまざまな食材が手に入るということだけでも、恵まれているのかな…色々な人の話を聞きながら、そんな風にも思う。



天地始粛のころ

















































中国の伝統的な建物が立ち並ぶ豫園を初めて訪れたのは先月。跳ね上がったひげのような屋根のカーブや、そこに並び立つ馬のような動物の飾りが可愛らしくて、上ばかり眺め歩く。蓮が濃いピンクの花を咲かせていた頃で、お湯の中を歩くようなリアル上海の暑さ。小龍包で有名な店で手のひら大の特製食べながら一息ついた。

街の眺めは"上海環珠金融中心"の展望階から。492mという超高層ビルは下から見上げると空の中へと吸い込まれるように湾曲してみえる。その100階に近い展望階から眺めは、高層ビルの林立に圧倒される。上海のランドマーク、東方明珠塔はなんだかマンガチックと思っていたけれど、こうして観ると丸とピンクの可愛らしさやキラキラ感が、この街の風景にとても良く合っている感じ。これだけ高層の建物郡にどれだけの人々がいるのだう…まだ想像がしきれない。





2013年6月26日水曜日

夏至のころ











































































上海の日々が慌ただしく過ぎて、頭の中とりとめない。川面に散らばる葉っぱのように、浮いて沈んでゆらゆら、彼方へ勢いよく流れ、また彼方では渦巻く水の一所に留まり身を任せくるくる回る…葉っぱ一枚一枚、思いあちこち。

新しい土地でのカルチャーショックは、今回もまた強力。自身の無知や思い込みに、あらためてびっくり。ここも、ものすごい勢いで変化をし続ける国、街。圧倒的な広大さ、数多の人々、多様な姿。新旧の交錯や貧富の開き。均質でないことへの違和感と、均質でないからこそのダイナミックな圧倒感。それらが混ざり合い生み出す熱やひずみのようなものにも吸い込まれてしまいそう。初めてのメインランド・チャイナ、初めての上海。

未知に触れる不安やそこへ入り込む心細さ、億劫をなんとか振り払いながら、馴染むように努めて生活し仕事をし、学び…多くの国のたくさんの人々のそんな姿がここにもあり、すごいなと思う。少し勇気もらう。

街に足を踏み出して、早々に方角見失う。言葉のほぼ通じない中に放り込まれた感じ。地図上にも漢字がひしめきごちゃごちゃ。スマホが上手く使いきれない…しばらく途方にくれ、通りすがりの人々に道を訪ねる。頭に残る数個ばかりのチャイニーズに英単語が混じり、最後は身振り手振りやら、自分でも呆れちゃう…なのに皆意外なほどに根気よくおしえてくれて、恐縮…なんだか少し安心。 

日本にみる大方のブランドショップ、飲食チェーン店などなど…商業地区だけみれば、ここはいったいどこの国?とわからなくなる。なんというか、アジア的というよりアメリカ的な感じも。国営はじめTVにながれるニュースの雰囲気やキャスターの感じ…とてもCNNぽいと思う。アップル社の大きなwhite appleの白光が街中に目立って放たれ、朝に夕に渋滞気味の道路には、ヨーロッパ車がなんとも多い。そういえば、欧米の映画が日本より早く公開されていたり。IKEAもカルフールもすべてが生活圏内で思う以上に何でもある。メトロも縦横に走りやはり便利で、駅構内などとても広い。タクシーもメトロのカードが使えて便利。日本でもpasumoなどのカードがタクシーで使えるようになったのは、最近と思うけれど。

上海はきっと特別…その中に観る違いにも、しばらくは慣れず混乱しそう。そして50こえるという少数民族もまた特別で、地方はまたそれぞれに特別で…全部なんてどうとらえてよいのかわからない…とらえられないし談じられない…かも。そういうのが少しわかる気もした。
二元論によらず、また概念にもよらずに直接つかむこと…それが般若というものです…そう解いた本をたまたま飛行機の中で読んで、ああそうね、と思う。そんなふうにこの街に国に直接ふれて、つかめたら…色々な思い抱きながらいつか何か納得できたらいいな。まだふわふわした頭の中で、そう思う。




2013年5月23日木曜日

蚕起きて桑を食うころ
















  


                    

                              


                                                            
















今朝の薔薇たち。東西や南北それぞれの位置で今が旬。 一斉に咲く蔓バラが皆こちらを向き賑やかさに圧倒されそう。 木立性の薔薇は花が開くたび、色の意外をいつも思う。もしかしたらその年によって色味も少しづつ変わるのかも。土や雨量肥料や声掛けなどなど。華やかに咲く花も強いようでデリケートと思う。夕べの水やりは、花々がぼんやり暗がりに浮かび、時間もおぼろな異空間。薔薇に囲まれ大好きな不思議だった。小さく可愛らしい白いクレマチスとアイスバーグ、それと名前を忘れてしまったマムの一種は、玄関先に今とても気に入っている白の三重奏。