甘粛省で迎えた今年の中秋。敦煌の街はコンパクトで、上海に比べとてもさっぱりとしたきれいさ。少し高い建物にいれば、五色の砂粒の鳴沙山がどこからでも望める砂丘の街。名前とイメージに憧れた街にこうしていることが、なんだかとても不思議。ラクダに乗って砂丘を歩く。ラクダは思っていたほど高くはなくて、象や馬の背にいるよりずっと安堵感。それぞれの飼い主がコントロールしてラクダ達をひいていく。 砂嵐に対応できるその睫毛は異常に長くて、鼻先長い顔をより可愛らしい感じにしているけれど、その背にまたがれば、灼熱の下を行く彼らの身体のすごさが伝わってくる。岩のように頑健で忍耐強そう、皮膚や毛は砂漠の砂に同化しているようなごわごわした感触。
今ごろの日没は8時くらい。この日は玉門関や陽関などから始まり、お昼からはゴビの土漠を東へひたすら走ること約4時間。 120km/hほどでノンストップ、土漠と空を地平線がくぎる。鳴沙山についたのは夕方で、太陽は傾きつつもまだ上の方にあり陽射しの強さ感じる。丘の陰にはいればちょうど心地よい具合の温度で、空となめらかな砂丘が広がる風景はのびのびとして爽やか。ハングライダー達は砂丘の上に月を横切る鳥のよう。
これが日中であれば、砂の中で一瞬のうちに卵がゆでられてしまうほどという。日暮れのころの優雅な砂丘と、日中、熱く乾いて永遠のような過酷を感じさせる砂丘。そのコントラストを想像したら、ラクダの背でちょっとクラリ…息をのむ。
街に戻り、歌劇場で観た舞台は、鹿が主役で仏教に所以のストーリー。バレエやダンス、新体操に軽業などなどパフォーマンス満載だった。 街の中心はサークル道路になっていて、その中央には中秋の月に琵琶を奏でる天女像。背中で琵琶を担ぐようにして奏でるのは、莫高窟の壁画に描かれた天女達のスタイルで、敦煌の街のシンボル。悠久の時を経て今も街と人々へ幸福の琵琶を奏でるよう。風雅な中秋の夜。
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